白いかけら
「ラド?」
俺は、目を見開く。
 彼女も同様に、首に手を当てて驚いたように目を開いてる。
「ウィン。声が…」
俺は驚きで、声が裏返りそうになった。
 彼女は俺をはっきりと見て、嬉しそうに目を細めた。
「声だけじゃない。ラドの声、聞こえるよ。ラドが、見える」
細められた目から、涙が溢れてきた。
 と、彼女は寒そうに肩を震わせた。感覚も戻ったらしい。
 俺は彼女の側により、首に青いマフラーを巻いてあげた。
 すると彼女は、初めてあった日のようにマフラーをぎゅっと握り、本当に嬉しそうに、ほほえんだ。
「暖かいね。ホントに、暖かい」
彼女は、泣き出した。止めどなく流れる涙を、手のひらでぬぐう。
 俺は、ゆっくり彼女を抱きしめた。ぎゅっと、互いの温もりを確かめるように。
 このまま、時が止まればいいのに。
 そう思わずには、いられなかった。
 しかし、時の流れはどうしようのないものだ。
 止まることなど、なかった。
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