B L A S T

硬直して男から目が離せないでいると、どこからか笑い声が聞こえた。


「嬢ちゃん。心配するこたぁねえよ。ちょーっとばかり顔貸してもらうだけでさ」


笑っていたのは運転席の男だった。


「オレの名前はタクマ。あ、こいつはカズね。なあに怪しいものじゃねえよ」


バックミラーにタクマという男の顔が映る。

黒髪のソフトモヒカンにつり上がった薄い眉毛に細い目。助手席の男、カズに比べると少し落ち着いてみえた。

とはいっても鏡越しからでも分かる眼力はただ者じゃない。

コンビニエンスアで感じたあのねっとりと絡みつくような視線の正体はきっとこいつだ。


「これからあたしをどうするつもりなんですか」


自然と声が震えた。

タクマは怪しいものじゃないと言ったけれど、誰が信じるだろうか。

こんな誘拐まがいなことをされて、「はいそうですか」と安心していられるほど楓はばかじゃない。

明らかに怪しいっつーの。
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