B L A S T

明日はきっと雨だろう。

さっきまで晴れやかだったのに空は雲行きが怪しく、灰色に濁っている。


「…好きなのか」


ガヤがぽつり、と呟く。


「お前、イツキのこと好きなのかよ」


波音がざわめいていた。

ガヤの真っ直ぐな視線に楓は目を合わせられずに


「…好きじゃない」


そう言ってうつむいた。


「嘘つけよ」


とガヤ。


「好きなら好きってはっきり言やいいじゃねえかよ」


そんなこと言えるわけがない。

イツキに彼女がいると分かった以上、どうして気持ちを伝えることができるだろうか。

今よりも傷付くことは目に見えているのに。


「もういいよ、その話は」

「よくねえよ」

「もういいって」

「お前がよくてもおれがよくねえんだよ」


その口調はどこか苛ついているように感じた。

ガヤは落ち着かない様子で煙草を手に取る。

苦い煙が宙を舞うと、ため息を吐いた。


「イツキのこと諦めるのかよ」


楓はしばらく押し黙っていたがガヤの鋭い視線に負けて渋々と小さく頷いた。


「だって彼女いるし…」


ふうん、とガヤ。

灰がゆっくりと落ちた。


「お前のイツキに対する気持ちってそんなもんだったんだな」
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