B L A S T

楓はガヤを睨みつける。


「なんでそんなこと言うの」

「本当のことだろ。女がいるから諦めるんだろ。それって要するに自分が傷付くことが怖いから何もしないでなかったことにするってことじゃねえか」

「違う。あたしは…」


楓は言葉に詰まる。


――自分が傷付くことが怖いから何もしない。


悔しいけれどガヤの言うとおりなのかもしれないと思った。

何も言い返せないでいる楓を不憫に思ったのか、ガヤは


「悪りい。ちょい言い過ぎた」


と謝った。


「…別に。本当のことだし」


ミルクティーに口をつける。

少し温くなっていた。


「なあ、楓」

「…なに」

「おれらがどうして走りやってるか分かるか」


少し考えて首を左右に振る。

ガヤは苦い煙を一気に吐き出すと、静かに言った。


「好きだからだよ」

「……」

「誰に止められようが障害物があろうがおれらには関係ねえ。ただ好きだから走るんだ」


だから楓、とガヤは続けて言った。


「本当にイツキのことが好きなら突っ走りゃいいんだよ」
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