B L A S T
「ったく、あんまり無茶すんなよな」
と呆れたようにため息を吐くガヤは母と同じことを言う。
「先生も感心してたんだぜ。あんな重傷だったのにこんな短期間でピンピンしてるのはとんでもねえ生命力だって。お前ってやっぱ無敵の楓チャンなのな」
「そのあだ名、いい加減やめてよ」
思いっきり背中を叩いてやると「痛え!」とガヤの叫びが部屋中に響き渡る。
「ふざけんな、おりゃここ怪我してんだぞ!」
「ああそうだったね。すっかり忘れてた」
「お前、殺す」
あはは、とジュンが面白がって笑っていた。
なんだかこうしているとあの日が起こったことがすべて嘘のようだ。
もしかしたらすべて夢だったんじゃないか。
あの声も。
あの温もりも。
楓はずっと気になっていたことを切り出した。
「ねえ。…イツキ、さんは?」
あの日以来、彼の顔もまた見ていない。
すると途端に表情を曇らせるガヤに楓は不安になる。
何かあったんだろうか。
「…今は会わないほうがいい」
「どうして?」
ガヤは言葉を詰まらせる。
その様子に不安を隠せない。
もしかしてこの間の喧嘩で病気が悪化したとか?
まさか大丈夫だよね。
すると見兼ねたジュンが遠慮がちに答えた。
「実はさ、…一兄怒ってるんだ」
え、と楓は首を傾げる。
…怒ってる?
「て誰に?」
「お前にだよ」とすかさず突っ込みを入れるガヤ。
「あたしに?」
ジュンは小さく頷いた。
「イツキさんがあたしに怒ってるの?…え、なんで」
ちょっと待って。
あたし何かしたっけ!?
いまいち状況に飲み込めない楓にガヤは苛立ったようにケータイを差し出した。
「それは本人に聞けよ」
画面にはイツキの名前が表示されている。
「えっまだ心の準備ができてない」
「なあにが心の準備だ。とっとと出ろ」
ガヤに促されて恐る恐る電話に出ると≪もしもし≫と低い声がして、鼓動が高鳴った。