B L A S T
「…だめだよ、イツキさん。殺していいなんてそんなこと言わないで」
視界がぼやける。
イツキが遠くに行ってしまいそうで、あたしは彼の手を握りしめた。
「言ったでしょ、イツキさんは必要な人なんだって。BLASTの皆も純平くんも、…あたしだってイツキさんが必要なんだよ」
「楓…」
ーー頑張れ。
ジュンの言葉があたしの背中を押してくれたような気がした。「イツキさん…」
「お願いだからあたしを置いていかないで。独りにしないで」
ふいに、あたしは彼に抱きしめられた。
小刻みに震える彼の大きな肩。
そのぬくもりがとても温かくて優しくてそれがとても嬉しくて、あたしの頬に涙が伝う。
「イツキさん…」
「ああ」
「ガヤに言ったように、あたしとも約束してくれますか」
「……」
「絶対に帰ってきてください」
彼の腕に力が入る。
あたしはそれに応えるように彼を包み込んだ。
「ああ。約束する」