蒼翼記
脳が、停止する。










何故僕ヲ知ッテイル?











その氷細工のような美貌が、冷たくほくそ笑む。

「青いな」

ヒタッ…

「自分を知られていたくらいでそんなに驚いてどうする?」
「っ!!?」

「主っ!」
「「「「「「リンッ!!」」」」」」


いつの間にか、いや、いつもの冷静なリンであれば見えたであろう速さで近付いたその男はリンの首筋に細い指先を這わせる。
指先の末端に生える鋭い爪が、嫌な寒気を感じさせる。

しかし、発した声は本人が思うよりもしっかりと、通常通りに響いた。


「何故貴方のような方が此処に?」


その紅い瞳と真っ直ぐに向き合っても変化の見られないリンを、その男は鼻で笑う。


「人型は王とあの小娘だけと思ったか?…だから貴様は"青い"と言うんだ」

「人型…?貴方は…」
「それ以上その言葉を言えばこの喉握り潰す」


静かな物言いに反した、強烈な殺気。
先程と変わらない表情の中で、血色の瞳だけが輝きを増した。


「俺はあんな非力な種族とは違う」


ギリ…ッ

リンの首にかかった指に力が入る。
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