蒼翼記
「女の子は何処?」


静かに口を開く。
その声は、静かで穏やかだったが威圧感があった。


「…後ろの、テントだよ」


国王の声も、静かで穏やかで威圧的だった。




「どうして…どうして普通の子として産まれてくれなんだ」


その言葉にその羽付きの動きが止まる。


「私の最愛のセシアを殺して産まれ、愛せなどするものか………どうして愛させてくれなんだ」

「…………まさか、でも」


「最期にお前に母の名を教えてやる。
セシア・リカルド。
お前と、お前が殺した"毒華"リアン・リカルドの母親だ」


金色の瞳が大きく見開かれ、羽と同じ琥珀色に戻っていく。


「私の最愛の妻だ」



力を振り絞り、腰の刀を抜く。
この一太刀をどれだけ望んだことか。


リンは動かなかった。
復讐と愛情のジレンマに苛まれ続けた王を、拒む気にはなれない。

そっと、目をつぶった。














ド………ッ

ズンッ







「……………え?」
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