粉雪2-sleeping beauty-
『…コンビニじゃん。
何でそんなに怒ってるの?』


口を尖らせて言う千里に、言いたいことを飲み込んで、代わりにため息をついた。



「…何だよ、コレは?」


目線だけを料理に向け、再び千里の方に戻した。



『…誕生日。
祝ってあげようと思ったの。』


そんな俺に、お菓子だらけの袋を手渡した。


そして何も言わず、並べていた料理に掛けられていたラップを、順に外していく。



「…何で、電話出ないんだよ?」


『え?電話したの?
ごめん、財布しか持って出てなかったし。』


その言葉に、またため息をついた。


煙草を咥え、ソファーに腰を下ろして天井を仰ぐ。



「…悪かったよ、怒鳴って。」


『良いよ、気にしてないから。』


少しだけ笑い、千里は言葉を続けた。


『…マツはね?
怒ってる時は、何もしないでそっとしといた方が良いんだよ。』


「―――ッ!」


『…何で怒ってるのかは知らないけど、ご飯食べようよ。』


その言葉に、何故か泣きそうになった。



お前はずっと、俺のこと見てくれてたんだな。


そして、機嫌を取る訳でもなく優しく見守ってくれてた。


そんなことに、やっと気付いたんだ…。



その瞬間、“やっぱコイツだわ”とか、

“すっげぇ好きなんだな、俺”とかで、頭がイッパイになった。


ずっと忙しくて、俺はお前のことなんか考える余裕もなかったのに、

お前はちゃんと、俺のこと考えてくれてたんだよ。



なのに何であの時、俺はお前を突き放したんだろう…?


そのことばっか、後悔するんだ…。



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