粉雪2-sleeping beauty-
「何で早く、俺に言わなかったんだよ?!」


『…マツさんには言うなって言われてたから…。』



…あの馬鹿が…!



『てゆーか、マツさん!
ママのこと、怒っちゃダメだよ?!』


「―――ッ!」


瞬間、怒りが急に収まった。



「…わかってるよ…。」


それだけ言い、電話を切った。



あれから千里は、うちに来なくなった。


電話を掛けてくることもないし、俺から掛けても無愛想にされるだけだ。


そのことが余計に、俺を腹立たせていたんだけど…。




ため息をつき、閉じた携帯を再び広げて、

リダイヤルに残る千里の名前を表示させて通話ボタンを押した。



―プルルルル、プルルルル…


『…ハイ?』


戸惑いがちに、電話口から千里の声が聞こえてきた。



「…俺、ロールキャベツが食いたい気分なんだけど。」


『だから?』



相変わらず、千里の機嫌も直らないままらしい。



「…困ったことに、部屋も汚ぇんだよ。」


『それで?』



“それで?”って…。


何でコイツはいつも、こんな調子なんだろう。


お互いに沈黙の後、千里は深いため息をついて言葉を発した。



『…マツさぁ…。
あたしのこと、家政婦かなんかと勘違いしてない?』


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