粉雪2-sleeping beauty-
「言わなきゃわかんねぇだろーが!
俺は隼人さんとは違うんだよ!
お前の顔見ただけじゃ、何もわかんねぇだろーが!!」


『―――ッ!』


千里のライターと煙草を持つ手は、硬く握り締められていた。


張り詰めた空気が、部屋中を包む。



「ホントは怖いから、俺の家に来てたんだろ?!
何か言えよ!!」


『―――ッ!』


それでもまだ、千里は何も言わない。


ため息をついて、短くなった煙草を消した。



「…なぁ、千里…。
俺じゃ頼りにならねぇか…?」


『―――ッ!』


瞬間、千里は堰を切ったように泣き出した。


小さな肩が震え、俺の心を締め付ける。



「…何かお前、痩せたな…。」



…ちょっと見ない間に、こんな風になっていたんだ…。


ずっと、一人で頑張ってきたんだな…。



本当は、抱き締めたかった…。


だけど、抱き締めることが怖かった…。



部屋中に千里の嗚咽が響き、苦しくなって顔を覆った。


泣いた顔なんて、見たくなかったんだ…。



「…もぉ、大丈夫だから…。
俺が居るだろ…?」


だけど千里は、何も言わなかった。



傷つけたのは、俺なんだろうか…?


俺はただ、お前を守りたかっただけだったのに…。


…それが、ダメだったのかな…?



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