粉雪2-sleeping beauty-
「…心当たりは?」


俺の問い掛けに、千里は小さく首を横に振る。


やっと泣き止んだその顔は、疲れ切っているようにも見えた。



「…店、休むか?」


『…大丈夫だよ…。』



…またこれだ…。


何でコイツは、無理したがるんだろう…。



「…だったら、不細工な化粧直せよ。」


諦めてため息をつき、煙草を咥えて火をつけた。


横目に見た千里は、少しだけ口を尖らせて、むくれている様にも見える。



「…無言電話もあるんだって?」


『…うん。
でも、非通知拒否にはしてるんだ…。』


そう言って、携帯を見せられた。


着信履歴には、無数の“非通知”の文字が並んでいる。


これは、尋常じゃない。



外は今にも泣き出しそうな曇り空。


たったそれだけのことで、こんなにも不安を煽る。



『…マツは…死なない…?』


「…え?」


突然の言葉に、目を見開いた。



『…死んじゃ…ダメだよ?』


伏せていた目は俺に向けられ、不安そうに瞳が揺れていた。



「…死ぬかよ。」


安心させるように、少しだけ笑いかけてやった。


だけど相変わらず、心臓は嫌な音を刻み続けている。


< 129 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop