粉雪2-sleeping beauty-
海辺のこの街は、お前が生まれ育った街なんかより寒くて、

冬が来るのも少しだけ早かった。


段々寒くなるにつれて、お前も少しずつおかしくなって行ったよな。


たまに顔色も悪かったり、明らかに変なほど明るかったり。



何で俺に、助けを求めなかったんだ…?


何やってたって、駆けつけてやったのに。


迷惑掛けてると思ってるなら、全部言えば良かったんだよ。




『…マツにこれ以上、心配掛けさせる訳にはいかなかったんだ…。』



病院で聞いた時には、結構ショックが大きかった。


あんなに後になって聞かされる方が、よっぽど心配になるだろ…?




だけど、忙しさを理由にしちゃいけないのかもしれないけど、

やっぱり俺は、何も聞けなかったんだ。


だって、命日が近かったことくらい、俺にだってわかってたから。


明るく振舞うお前に、合わせることしか出来なかった。




『マツ~、ご飯粒ついてるよ?』


クスッと笑った顔から、思わず目を逸らした。


お前は母親が子供にしてやるみたいにやってたのかもしれないけど、

俺的には“オイオイ!”ってカンジ?


“その顔は反則だろ~!”とか思って。



お前を苦しめたくないから、言うつもりなんてなかったんだよ。


だけど俺、その頃にはもぉ、マジでヤベェくらいにお前のことが好きだった。


どーしたら自分のものになるかばっか考えてたんだ。



その頃が一番、俺の人生で青臭い頃だったよ。


思春期だ何だって言う前に、女は覚えてたしさぁ。


こーゆーのって、どーして良いのかわかんなかった。




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