粉雪2-sleeping beauty-
目が合った瞬間、先ほどの笑顔を引きずったままの顔で、少しだけ頭を下げられた。


胸元の薔薇は、あの日見た千里のペディキュアと同じくらい真っ赤だった。


男の俺から見ても、完璧なほどの笑顔で。



何だ、コイツ?


不審に思いながら、煙草を咥えたまま目線だけでその姿を見送った。


少しだけ笑った顔が隼人さんに似ている気がするのは、気のせいなんだろうか。



『…嵐さん、暇じゃないはずなのにね。』


ルミは千里に向け、少し困ったように笑いかける。



『…仕事にヤル気ないんだよ、あたしと一緒で。』


同じように千里も、少しだけ笑いながら、セブンスターを抜き取った。



『あたし、帰るよ。』


『お疲れ、ルミちゃん♪』


ホストに向けた笑顔と同じ顔をして、千里はルミを見送った。


カランッと小さく音を立て、ルミが店を出る。




「…何で、ホストが居るんだよ?」


やっと口を開いた俺の咥えていた煙草は、いつの間にか短くなっていた。


煙を吐き出し、ゆっくりと視線を落としながら灰皿に押し当てる。



『…友達だよ。
アイツ将来、自分のお店持ちたいんだって。
色々相談とかさっ♪』


そう言って、少しだけ笑った。


そして、作っていた酒と自分の酒のグラスを持って、俺の横に座った。



何だか、モヤモヤとしたものが体中を支配していく気がする。


ずっとコイツは、俺だけに頼って生きてるんだと思ってたのに…。


俺の知らないところに、別の世界を持ってる気がした。


当たり前なはずなのに、頭と心がついていかない。



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