粉雪2-sleeping beauty-
『…何でみんな…あたしの心配なんかすんの…?
そんなの…欲しくないよ…。』


俺の頬から離れた千里の右手は、顔を覆うように動いた。


千里の指の隙間から、雫が垂れる。



『…マツが隼人に見えてきて、怖かった…!
“違う”って言ってるのに、同じことするマツなんか、大嫌いだと思った…!』


「…もぉ良いよ、千里…。
もぉ…良いから…!」


ゆっくりと、抱き締めた。


俺の腕にスッポリはまってしまった千里の体は小さくて、思ってる以上に細かった。


俺の服を握り締め、震えるように泣いていた。


壊したくなかったはずなのに、どうすることも出来なくて…。


抱き締める腕に力を込めた。



もっと早くに、こうしてれば良かったんだ…。


抱き締めてれば、少しはお前の不安も伝わってたかもしれないのに…。



『…離してよ…。
お願いだから…離して…!』


顔を上げた千里は、ゆっくりと俺の体を押す。



『…マツは…あたしに縛られないで…。
“幸せに成る”って名前を与えられたマツは、あたしと一緒に居たらダメなんだよ…。』


「―――ッ!」



…拒絶…されたんだろうか…。


やっと掴んだと思ったのに…。


何でお前が、離れていくんだ…?



…そうか…


俺が、隼人さんと一緒だからか…。



俺はお前に“愛してるんだ”なんて言えなかった。


もっと苦しめることなんて、出来る訳がなかった。


…どうすれば良いかなんて、わかんなかった…。



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