粉雪2-sleeping beauty-
「…それでも…。
お前が何を言おうと、何を思おうと…。
…お前しか…居ないんだよ…!」


『―――ッ!』


泣き崩れる千里に、手を差し伸べることが出来なかった。


抱き締めれば、また拒絶されそうで…。


…そんなことが怖かった…。



「…なぁ、千里…。
前みたいに戻ろう…?
…俺に…弱みとか全部…ぶつけろよ…。」


『―――ッ!』


千里の涙が伝う頬に触れた。



温かくて…


生きててくれるだけで良かったと思えた…。


それ以上、何も望まない…。



「…今度はちゃんと聞くから…。」


唇を噛み締めた。



コイツを守るって思ってたのに…


傷つけないって決めてたのに…


全部、壊したのは俺なんだ…。




『…マツの言う“約束”なんて、もぉたくさんだよ…。
何を信じれば良いの…?』


「―――ッ!」


『…“俺が居る”って言ったのに…。
居なくなったじゃん!!
何でまた、あたしの前に現れるの?!
…頼むから…振り回さないで…!!』



それは多分、当然のことで。


先に手を離してしまった俺は、何も言えなかった。


失った時間は取り戻せなくて…


一番大切だったのに…。



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