粉雪2-sleeping beauty-
『…マツも隼人も…。
どっちも嘘つきじゃん…。』


「―――ッ!」



比べないで欲しかった。


ずっと、そう思ってた。


なのに、何も言い返せなかった。



「…お前だって…。
俺との約束守らなかったろ?!
“飯食え”って言ったよな?!」


『―――ッ!』



責めたくなんて、なかったんだ…。


だけど、ただ悔しかった。


“約束”なんてものに縛られてる俺達は、ただのガキみたいで…。


そんな自分が、すごく嫌だった…。



「…お前が言ったんじゃねぇのかよ…。
“マツを取り上げないで”って…。」


『…それは―――』


何も聞きたくなかった。


振り払うように千里の言葉を遮り、捲くし立てた。



「俺にどうして欲しいんだよ?!
何でお前、何も言わねぇんだよ?!」


『―――ッ!』


部屋中に俺の声が響いた。


押し黙る千里は唇を噛み締め、言葉を押し殺しているようにも見えた。



『…もぉ…わかんないよ…。』



再び泣き崩れた千里に、やっぱり俺は、手を差し伸べることが出来なかった。


こんな光景を、何度繰り返してきただろう…。


傍に居れば傷つけるだけなのに、離れることすら出来ない。


本当に俺は、隼人さんとまるで同じだ。



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