粉雪2-sleeping beauty-
『…悲しい顔してるね…。』


「―――ッ!」


『…仕事辞めちゃったこと…悲しかったんでしょ?』


優しく笑いながら、俺の頬に触れた。



多分、コイツには俺の考えてることがわかってるはずなのに…。


こんな風に聞いてくることに、千里の優しさを感じた。


やっぱり俺は、いつまで経っても千里に敵わない…。


“年下のくせに”とか、“女のくせに”とか…。


少しだけ悔しかった。



「…そうだよ。
あれで、事務員の綺麗なネーチャンとの接点がなくなったんだもん…。」


『…馬鹿だね、マツは…。』


安心したように笑い、俺の頬に触れていた手は、再び布団の上に戻った。



何をすれば、結果は変えられただろう?


何を言えば、結果は変えられただろう?



お前はもぉ全部、吐き出したんだと思ってた。


お前の葛藤と、一番大きな悩み、そして苦しみ。


そんなものがあったなんて、気付かなかったんだ…。



何で隠し通したんだろう…?


やっぱりそれは、俺の所為であり、俺の為なんだろうな…。




今度は、族で旗持ちになったことを話したあたりで、千里の寝息が聞こえてきた。


やっぱり安堵と不安が支配して、モヤモヤとしたものだけが残った。



前のように戻っても、俺はコイツを傷つけないように出来るだろうか?


“今度こそ俺のものにしたい”という欲望を、抑えることが出来るだろうか?


頭の中には、“ヤベェな”ってのと、“ダセェな”ってのばっかでさ…。



距離の取り方なんて、もぉわからなかった。


俺は、お前に触れてしまったから…。


ずっと引いてた一線を、越えてしまった気がしたから…。



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