粉雪2-sleeping beauty-
『駅前の大通りに定食屋あるだろ?
あそこに集合。』


「無理。
つーか、絶対嫌。」


口元を引き攣らせ、置いてあった煙草を鷲掴んで一本を抜き取った。



『絶対来いよ、マツ!』


それだけ言った嵐は、電話を切った。


ため息をつき、咥えた煙草に火をつける。



…つーかアイツ、隼人さんみたいなこと言いやがって…。


何で俺を“マツ”と呼ぶやつは、決まって俺を振り回すんだろう。


呪われてんのかなぁ…。


そんなことを考えながら、漂う煙を見つめ続けた。










『―――遅いんだよ、マツ!』


「うるせぇよ。
てめぇが呼び出したんだろーが!」


狭い定食屋に、ひときは目立つ白のスーツと茶色い頭。


俺を見つけた嵐が声をあげ、店員がこちらをチラッと見た。


少し恥ずかしくなりながら、仕方なく嵐の向かいに腰を下ろす。



『俺もさぁ、ちょっと前に店終わったんだよ。
もー、マジで飲みすぎ!』


そんな俺に、嵐はメニューを見ながらベラベラと話し出した。


『あ、マツは飯食った?
まぁ、どーでも良いけど。
何かこう、軽いのが良いよな~。』


「―――オイ!
無駄話してぇなら、俺は帰るぞ!」


睨んだ俺に、嵐はため息をついた。


そして“オバチャン、コレね!”と言いながら、俺に向き直った。



『…千里にさ、頼まれたんだよ。』


「アァ?」


突然の言葉に、眉をしかめた。


そんな俺にお構いなしに、嵐は机の上に置いてあった煙草を抜き取り、

ジッポで火をつける。


カシャンと音を立てて閉じられたジッポから目線を戻し、それを俺に向ける。


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