粉雪2-sleeping beauty-
顔なんか洗ってるうちに、従業員達が帰ってきた。



…もぉ、そんな時間かよ…。


そんなことでまた、ため息をつく。



『お疲れ様です!!』


「…ハイ、お疲れさん。」



正直、デカい声なんか出して欲しくもないんだけど、

やっぱりちゃんと働いて帰ってきた従業員達には、そんなことは言えないわけで。



「…今日も怪我なく無事に終わったみたいだな。」


机の上に置かれて行く日報を横目に、

心の中で何度目かわからないほどのため息をついた。



開いたり閉まったりする扉から、外の冷気が流れ込んでくる。


その冷たさに、少しだけ身を縮めた。










『―――おまたせ~♪』


緊張して迎えに来た俺なんかとは正反対に、千里は本当に“普通”だった。



『…あのね?
駅前の通りあるじゃん?
あそこをずっと真っ直ぐ行って、4つめの信号右でしょ?
そしたら交番あるらしいの。
そこをまた右で~?』



そして、よく喋る。


あぁこれは、コイツなりに気を使ってるのか。


やっと気付くことが出来た。



やっぱお前は、優しい女だよ。


そして、俺なんかよりもずっと、器がデカい。


ホント、お前には頭が上がらねぇよ。


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