粉雪2-sleeping beauty-
a vision
―――迎える朝は麗らかで、訪れる夜は漆黒だった。


携帯もこの空も、同じように繋がっていて。


こんなに近くに住んでいて…。


なのに俺達はもぉ、再び交じり合うことがない。


違う世界に住んでいることを確かめるように、俺は朝に起き、夜に眠る生活に変えた。



相変わらず、嵐からは心配するように電話が掛かって来る。


だけど俺よりも、千里に電話をしてくれと頼んだ。



アイツが今、飯を食ってないことも、

アイツが今、海を眺めていることも、

アイツが今、泣いていることも…。


わかってるはずなのに、俺には何も出来ない。


無情にも、俺なんてお構いなしに毎日が過ぎてゆく。


仕事して、掃除して、洗濯して、飯食って、銀行行って、請求書作って…。


酒も女も、何も要らない。


アイツだけが、ただ欲しかった。



抱いてさえいないのに…


俺のじゃないってわかってるのに…


それでもまだ、縛り付けられる。



ムカついてるはずなのに、全然嫌いになれなくて…。


この二年、どれだけの時間をアイツと過ごしてきたかを、ただ思い知らされるんだ。



全然俺の心から出て行ってくれなくて…


それでもまだ、愛し続けてて…


苦しくて苦しくて、堪らなかった…。



季節はいつの間にか12月になり、海辺のこの街はすっかり冬景色へと変わった。


眺める窓にはツリーの絵はなくて、

腰掛けるソファーにも、キッチンにも、アイツの姿はない。



ただ寒くて…


だけど心の中の方が、もっと寒かった…。



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