粉雪2-sleeping beauty-
「…お前さぁ、今度何食べたい?
高い物でも何でも言えよ!」



“今度”


そんな風にして、明日や明後日を繋ぎとめるんだ。


何だかんだで千里は優しいから、俺との約束はちゃんと守ってくれるから。



だけど、“死ぬなよ?”なんてことは、言えなかった。


そんなことを口にしてしまえば、急に現実味を帯びてくる。




『…うん、考えとくね。』



今考えれば、俺のそんな動揺は、千里には全部わかっていたのかもしれない。


だからきっと、千里は苦しかったんだと思う。


俺がお前を、繋ぎとめてしまったんだな…。





『…もーすぐクリスマスだね…。』


「―――ッ!」


声が震えている気がして振り向くと、千里は泣いていた。


精一杯で涙を堪えて、窓の外のイルミネーションを見つめていた。




「…何か欲しい物あるか?」



触れちゃいけない気がした。



『…ごめっ…!』


俺の問い掛けに、千里は嗚咽交じりに声を発することがやっとだった。



きっと脳裏に浮かんだ言葉は、


“隼人が欲しい。
隼人を生き返らせて―――…”


そんなカンジだったのかもしれない。


また俺が傷つけたのに、千里は自分を責めて泣くんだ。


お前は優しすぎるから、俺の気持ちまで考えてくれてたんだもんな…。


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