粉雪2-sleeping beauty-
俺はお前のこと、何度自分だけのものにしたいと思ったことだろう。


本当は、お前の笑顔を俺だけで独占したかった。


お前は綺麗過ぎるから、知らない間にどっか行っちゃうんじゃないかって心配だったんだ。



「…なぁ、千里…。
頼むから、これからは隠し事なんかナシにしてくれよ…。
どんなことでも良いから、ちゃんと俺に言ってくれ。」


『…うん…。』



もぉこれ以上、お前に何も抱え込んで欲しくなかった。


受け止めることが出来るのかはわからないけど、

それでも出来る限りお前の苦しみを減らしてやりたかったんだ。





『…あたしね、もぉ疲れちゃったんだ…。』


ポツリと呟く千里に、瞬間、嫌な予感が走った。



「…じゃあ、店休めよ!
どっか連れてってやるよ!
どこが良い?
つーかこれから、駄菓子屋連れてってやろうか?」


焦って言葉を並べた。


本当にただ、嫌な予感がしたんだよ。


“死ぬんじゃないか”って…。



『…ありがとね、マツ…。』


そんな俺に、千里は笑い掛けた。


いつもの優しい顔で、優しい口調で。


長い睫毛が顔に影を落として、それが少しだけ悲しく見える。



そんな顔をされると、俺は何も言えなくなるんだよ…。


俺だって怖かったんだ…。


一周忌を過ぎたら、お前がどうなるのかが…。


ただ唇を噛み締めて、ハンドルを握り締めることしか出来なかった。


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