粉雪2-sleeping beauty-
I stopped
『―――マツ!!』


声が響き、瞬間、顔を上げた。


目に映るのは、今にも泣きそうな顔でこちらに向かってくる千里の姿だ。



…あぁ、ホントに生きてる…。


そんなことだけで、安心してしまう。



小走りだった千里の足は、次第に重くなるようにして俺の前で止まった。


見上げた千里の顔は、怒っているような、それでいて悲しそうな。




『…怪我…してるね…。』


少し悲しそうに俯きながら、千里はそれだけ言った。



「男前に磨きが掛かったろ?」


『…馬鹿だね、マツは…。』


少しだけ口角を上げて言う俺に、千里は諦めたように呟いた。


話しているだけで、ただ胸が締め付けられた。



愛しくて、愛しくて…


ゆっくりと立ち上がる俺に、千里の戸惑いの瞳が揺れる。


微かに放たれるスカルプチャーの香りも、綺麗な顔も、大きな瞳も…。


今、確かに俺の前にあるんだ。



「…会いたかったんだよ…ずっと…。」


『―――ッ!』


ゆっくりと抱き締めた。


千里は何かを押し殺すように俯き、唇を噛み締めた。


抱き締めた千里は、やっぱり小さくて、細かった。


そして、温かかった…。


次第に千里は震えだし、声を殺して泣いていた。


だから俺は、安心させるように、抱き締める腕に力を込めた。



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