粉雪2-sleeping beauty-
say good-bye
―――残された5日の間に、俺は全てにカタをつける。


全て捨てて、最高の笑顔で千里を迎えに行く。


誰にも理解されなくても良い。


全部取っ払って、俺の中を千里だけにするんだ。


これからは、千里のことだけを考えて生きられる。


夢を馳せ、これから起こる恐怖と不安を打ち消した。





『…ママ、寝たみたいだね…。』


千里の寝息を確認したルミは、安心したように深いため息をついた。



「…今のうちに入院に必要なもん取りに行こう。
お前も来いよ。」


『…うん。』


立ち上がった俺と同じようにルミも立ち上がり、静かに病室を出た。


病院の空気はまるで陰そのもので、吸っているだけで不安になる。



病院から出ると、先ほどと変わらず粉雪が舞っていた。


見上げる空は真っ暗で、隼人さんが作り出した闇に吸い込まれそうになる。


きっとあの人は、

千里の作り出した灯りだけを頼りに、巣食われそうな道を歩いてきたのだろう。


俺の咥えていた煙草から吐き出された煙は、吐き出す息と一緒に真っ白く消えた。


かじかむ手よりも締め付けられた胸が痛くて、足早に車に向かった。




「…なぁ、ルミ…。
千里のこと、嫌いにならねぇでくれよ…。」


『…なるわけないよ…。
ママはルミに色んなことを教えてくれて、色んな相談に乗ってくれたの。』


そして顔をこちらに向け、少しだけ微笑んで続けた。


『今、ルミ彼氏居るんだ。
ママが相談に乗ってくれたから、ルミは今、その人のこと信じられるようになったの。』


「…そっか。」



ルミの過去は、聞かなかった。


だけど、軽からず何かを背負っているんだと思う。


千里が救ったのは、隼人さんと俺だけじゃなかったんだな…。


俺が取り上げてごめんな、ルミ―――…



< 294 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop