粉雪2-sleeping beauty-
『…その子はきっと、ホントはマツの気持ちに答えたいんだよ。』


「―――ッ!」


ポツリと言った言葉に、目を見開いた。


だけど少しだけ早くなった心臓を落ち着かせ、言葉を選んで紡ぎだす。



「…よく知ってんだな、その女のこと。」


『…まぁね。』


それからの沈黙は、嫌に長く感じた。


どんなに頭を働かせても、良い言葉が思い付かない。



「…待ってろよ、明日まで。」


『…うん。』




なぁ、千里…


お前はあの5日の間、何を考えてた?


俺のことばっか考えてくれてたんだとしたら、ちょっと嬉しいな。



どんなに前向きに考えたって、恐怖と不安は俺の心に住み着いてた。


想像するだけで怖くて、手が震えてたんだ。


だから、お前に触れてた。



愛してたから、この決断以外になかったんだ。


少しずつ近づいていくタイムリミットまでの時間を、大切にしたかった。


色んな話して、他愛もないことで笑いあって…。


どれも全部、覚えてるから…。



だから俺はずっと、お前と生きてる。


これが、俺の愛し方なんだ。



毎日毎日、お前が出した“クイズ”の正解を考えて。


毎晩毎晩、あの日の星空を思い出すんだ。


そしてあの“約束”だけで、俺は生きていられるから。



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