粉雪2-sleeping beauty-
『―――凄い料理だね!
カニ何匹分?(笑)』


運ばれてきた料理は机の上に隙間もないほど並べられた。


それを見た千里は、目を輝かせて笑顔を向けた。



「…可哀想だから、全部食ってやれよ。」


煙草を消しながら、俺はその笑顔を呆れ半分で見つめた。



『ずっと病院食だったじゃん?
だから、嬉しいの♪』


「…金払ってお前の喜びが得られるんなら、簡単で良いな。」


『―――ッ!』


瞬間、千里は悲しそうに俯いた。



『マツなんか―――』


「千里!」


千里の言葉を遮り、俺は声を上げる。


一瞬肩を跳ねさせた千里は、恐る恐る顔を上げた。



「…嘘でも“嫌い”とか言うなよ。
今日だけは、言わないでくれ…。」


『―――ッ!』


何かを考えるように再び俯いた千里は、ゆっくりと言葉を紡ぎだした。



『…ごめん…。
嫌いな訳…ないじゃん…。』


そして顔を上げ、言葉を続ける。


『…マツだから楽しいし、マツだからあたしは嬉しいんだよ?』


「―――ッ!」



なぁ、千里…


俺らは、本当に不器用だったよな…。


何でこんな風にしか愛してやれなかったんだろう…。


そんなことばかり、いつも後悔してるんだ。


本当に愛してたから、壊さないように必死だった。


“ありがとう”は、俺の台詞だから…。


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