粉雪2-sleeping beauty-
「…やめろ、千里!
それ以上言うな!」


抱き締めた千里は、小さく震えていた。


不安で不安で、怖くて怖くて…。


だけど千里も、俺を抱き締めてくれた。



「…泣くなよ…。
お前今日、泣いてばっかじゃん…。」


だけど千里は、俺の服を握り締めながら言う。



『…ホントはずっと、マツのこと愛したかった。
マツと居れば幸せになれるって、ずっとわかってたの…。
でも、出来なかった…。
もぉやだよ、こんなの…。』


「―――ッ!」


何も言わせたくなくて塞いだ唇は柔らかくて、そして少しだけ冷たかった。


ただそれだけのことで、何でか泣きそうになって。


いつもいつも、俺は千里の前だと弱くなるんだ。


何で俺達は、傷つけあってしまうんだろう。


隼人さんさえ居なければ、俺達は幸せになれてたのかな?


だけどきっと、隼人さんが居たから今の俺達があるんだ。


結局、あの人を抜きにして考えることなんて出来ないんだもんな。



「…疲れたろ?
家、帰ろう…。」


『…うん。』



泣いて、笑って、喜んで…


傷ついて、傷つけて、苦しくなって…


折角俺を、この世で最期の男に選んでくれたのに、

結局いつもと同じことしか出来なかった。


もっと幸せを感じさせてやりたかったのに…。


だけどお前は、約束してくれたんだもんな…。


あの約束に夢を馳せると、いつも幸せだと思えるんだ。


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