粉雪2-sleeping beauty-
『…社長見てると、イラついてくるんですよね…。』


「アァ?!」


真鍋の言葉に、眉をしかめた。



『…もぉ、当たって砕けちゃえば良いじゃないっすか!』


「…勘弁してくれよ…。」



砕けちゃったら、終わりだろ。


てゆーかそれ以前に、千里は俺なんか見てないんだから。



『…ママの彼氏、こんな時でも現れないんすね。』


「―――ッ!」


辺りを見回す真鍋に、心臓が嫌な脈を打った。



「…来れる訳ねぇだろ…。」



来てたとしても、俺達には見えないんだから。


残酷な話だよ。



『…来れない人なのに、ママはその人のことが好きなんすね。』


何かを悟ったのか、真鍋は千里の背中を見つめた。



『…そんなママのことが、社長は好きなんしょ?』


「―――ッ!」


向き直って、改めて聞かれた。



「…あの人を想ってるアイツなんか、好きなわけねぇだろ。」


言いながら、酒を流し込んだ。



多分、飲みすぎだ。


馬鹿みたいに、真鍋にこんな話しちゃってるし。



真鍋は、俺なんかよりよっぽど“大人”だ。


歳だけじゃなくて、中身も俺より器がデカイ。



…こんなんじゃ俺、千里と並べねぇわ…。


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