粉雪2-sleeping beauty-
『マツを傷つけないで!』


「―――ッ!」


怒鳴る千里に、言葉を失った。



…俺が…傷つく…?


傷ついてるのは、お前だろ…?



『隼人が死んだのは、マツには何の関係もないよ!』


「千里!やめろ!!」


千里の腕を掴んで制止した。


真鍋にでさえ、殴りかかりそうなほどの剣幕だ。



『…スンマセン、俺…』


真鍋は小さく呟いて、言葉を飲み込んだ。



…頼むから、掻き乱さないで欲しかった…。


折角静かに暮らしてるのに、波風を立てた真鍋にもルミにも…


河本でさえも恨んだ。



『…マツだって苦しんできたんだよ…!
ずっとあたしのこと、支えてくれてたんだよ…!』


「―――ッ!」


胸が締め付けられる。


苦しくて苦しくて、本当に窒息してしまいそうだ。



「…千里、わかったから、もぉ良いよ。」


その瞬間、千里の拳から力が抜けた。



『…ごめんね?ママ…。』


力なくうな垂れた千里の肩を支えるように、ルミは呟く。


重苦しい空気は4人分になり、狭い事務所を包み込んだ。


誰も言葉を発することが出来ず、ただ黙ったまま時間だけが過ぎていった。


< 98 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop