粉雪2-sleeping beauty-
「…ホラ、飯行くぞ!」


沈黙を破ったのは、俺だった。



「真鍋!
てめぇの車にルミ乗っけて着いて来い!」


『…ハイ。』


千里はまだ、俯いたままだ。


ため息をつき、千里の荷物を持ち上げて自分の車に引っ張った。


外の空気を吸い、少しだけ息苦しさから解放された。




―バタン!…

車に乗った俺の助手席に、千里も何も言わずに乗り込んだ。


ルームミラーで真鍋の車を確認し、エンジンを掛ける。



「…大丈夫か?」


『…うん…。』


声にならないほどの声で、千里は小さく返事をした。



「…俺のことなんて、心配するなよ。
お前がそんな風なのが、一番俺を心配させるんだよ…。」


『…うん、ごめん…。』


千里は窓の外を見つめた。


昼の日差しが眩しくて、俺はサングラスを掛ける。


こんな傷ついた顔、千里には見せられないからだ…。



「…悪かったよ、勝手なことして…。」


『…ありがとね、マツ…。』


そんな俺に、千里は力ない顔で笑った。



“支えあう”ってのは、

自分達が思ってるよりずっと、バランスを取るのが難しいものだったんだな。


俺は、千里を甘やかしていたんだろうか…?


それとも、余計に傷つけていたんだろうか…?



今はもぉ、何も聞くことが出来ない―――…



< 99 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop