開かない扉
「千代ちゃん、おぃ!どうしたんだ。
きこえるか?
千代ちゃん!千代っ!」


「う・・・うっ・・・頭が痛い。気分が悪い・・・」


ナオは千代の顔色を見て、すぐに回復魔法をかけた。




(僕の診立てが間違っていなければ、たぶん・・・)



千代はニコッと笑顔になって起き上がる。


「あ、急に起きてはいけない。ゆっくりでいいから。」

「先生、いったい私は・・・目が覚めたら、すごく頭は痛いし、目が回るほどクラクラして気分悪くて・・・」



「たぶん、一時的に過労になっていたんだ。
いっきにこの書庫の知識が君の頭の中へと情報になって押し寄せたんだと思う。
きっと普通に書物を読んだとして、何年かかかってしまう情報量をほんの数分で頭がとりこんだんだ。

だから僕は疲れがとれる回復魔法を使った。
少しは楽になった?歩ける?」


「ええ、ぜんぜんこのくらい平気! ほら、このとおり立てるし・・・あっ」


千代は一度は元気に起き上がっては見せたものの、バランスをくずしてナオの膝の上へと倒れこんだ。

「おっと・・・。無理はいけない。回復魔法は応急処置だからね。
診療所へもどって点滴しながら休んだ方がいい。さ、遠慮なくおぶさって。」


「え、でも・・・」


「ごめんね、はずかしいかな。でも、こんな目に合わせたのは僕の責任でもあるんだから、責任とらせて。
それに、ここにずっといるわけにもいかないでしょ。お腹も減ったし。」


ググゥ・・・・グルッ


「あ、そうみたいです。じゃ、お言葉にあまえちゃいます。」


「ああ。じゃ、もどろう。」
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