皆川修司という男

千代子は慎二とも仲が良かった。
修司はまだ慎二とは関わっていなかったが、千代子が『二人は仲良くなれそう』なんて根拠に無い事を言い、慎二の家に行く事になった。


…慎二の家に行った事を、
後悔するハメになるとは、修司は思いもしなかった。


「慎二、友達か?」


慎二の部屋に入ってきたのは、10個上の兄だった。
森川慎一。当時大学生。


ワックスで立った短髪と、鋭い目。
少しアヒル口な口と、お洒落な服装。
そして、長身。



《ピコーン》


どこからか音が鳴った。


どうやら千代子の方だった。



「ち、千代子?」


修司は、
千代子の目がハートマークな事に気付いた。


「修司!私達、別れましょ!」


決断の早い女である。
千代子は慎一に一目ぼれし、修司は振られてしまった。


慎一はわけもわからずそこに立っていたが、
修司の反応が面白くて、ずっと笑っていた。


そして、その日から何故か慎一に虐められる日々が始まった。



何が悲しくて、
元カノの好きな人に虐められなきゃいけないのだ。


修司は虚しくなり、
また人を信じられなくなった。


「ちょっとダーツやりたいんやけど」


慎一はそう言って修司をダーツの的にした。


(この人は…絶対、殺し屋かなんかだ!)


今までに無い、
激しい被害妄想は、慎一に向けられていた。
< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop