駆け抜けた少女【完】



大坂へと着いた壬生浪士組は京屋(宿)に着くと、近藤の指示のもと調査に当たる。


芹沢は、平山と野口と一室を借り寛いでいた。


そして、女中達が身の回りの世話をするため手持ち無沙汰になった矢央は近藤の隣で足を崩して口笛を奏でている。



「近藤さん」

「ん。どうした?」

「さっきね、芹沢さんにお茶をいれるべきかなと思ったら女中さんに断られちゃった。
私、何しに来たのかな?」


最近はまともに茶をいれられるようになった矢央は、それしか出来ないのに女中に役目を奪われ不服を訴えた。


近藤は、ぷくっと頬を膨らませる愛らしさに思わず笑う。


さらさらの黄金色の髪を撫でてやると、くすぐったさに瞳を細める矢央がいた。



「芹沢さんは、矢央君に気晴らしをさせてやりたかったんだろう。 気持ちに甘えゆっくりしたらいいさ」

「ん―、いいのかなぁ?」

「でも、事が済むまでは外出はいけない。 総司の手があいたら、大阪見物でもしたらいい」


現代でも関東暮らしだった矢央は大阪には行ったことがない。

現代と幕末では違いはあるが、初めての地の観光が出来るとわかり笑顔を見せて喜んだ。


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