駆け抜けた少女【完】
川から上がり、日向ぼっこで体を乾かす二人。
「おまん、迷子や言いよったな?」
「まあ……迷子のような?」
以前も夜の京で迷子になった時を思い出し、ブンブンと首を振った。
あの時は、不逞浪士の密会に直面し危ない目にあった。
それを思い出した矢央は、隣で上半身裸になった男の腰を見て恐る恐る尋ねた。
「お、おじさん…危ない人?」
大小の刀を見て言った。
男は、急に真剣な顔になり起き上がると矢央にグウンと顔を近寄らせる。
「さっきからきいちょれば、わしは"おじさん"じゃないぜよ」
「そ、そこですか?」
拍子抜けして、ガクンと肩を落とした。
「水も滴る良い男こと、わしは坂本龍馬じゃき!」
へー……
坂本龍馬…………
坂本龍馬?
「坂本龍馬あああっ!?」
「うるさいきに……」
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