駆け抜けた少女【完】

第十六話*新選組誕生




芹沢鴨を暗殺したことにより、壬生浪士組は新たな旅立ちを果たす。


人の死を持って新しい門出に立つとは何とも皮肉なものだと、山南は言った。


「葬儀も終え一段落つく前に、新しい隊名を発表するとは思わなかったね」

「新選組……か」


芹沢と平山の葬儀が終わった後、隊士達はその場に残るよう指示された。


八月十八日の政変での働きが認められ、松平容保公より新に[新選組]という名をいただいたと発表したのだ。


芹沢を亡くし、新たに新選組。

土方が想い描いていた、近藤勇を頂点にした隊作りを成し遂げたのであった。


「近藤さんも土方さんも嬉しそうだったね」

「そりゃあただの農民の出だった奴らが、やっとこさ認められたんだからなー」

「だあね。 これで生活力もつくし僕達には良いこと尽くし」


壬生寺で子供達と山南が遊んでいる微笑ましい光景を眺めているのに、藤堂の表情は浮かない。


「なのになんでかな……」

「平助?」

「全く嬉しく感じないや。 矢央ちゃん……大丈夫かな、あの子は」


晴れ渡った空を仰ぎ見る。

つられるように原田も空を見上げた。


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