駆け抜けた少女【完】

「…ンな糞ガキと一緒にするな、龍馬」

罵る以蔵だったが、その表情はほのかに赤い。

自分一人が迷っているわけではないのだと分かったからか、少し矢央を受け入れようとしているのが見てとれた坂本は安堵する。


「糞は酷いよ…」

「そうじゃ! こげな可愛い娘に糞はないぞぉ、以蔵! 矢央はな、まっこと素晴らしい女子じゃき!」

「ウッ! す、すまん……」


シュンと落ち込む矢央を見て、以蔵は謝った。

謝った人に対し、それ以上追い詰める真似をしないのが矢央だ。

ニコッと笑みを見せている。


「それより、此処は何処ですか?」


いたたっ! と、痛みに耐えながら起き上がろうとする矢央を「動くと体に障るき」と、また布団に横たわらせる。

言葉に甘え従った矢央は、窓からの景色が高いのを見て、此処は何処かの二階かと思った。


「此処はな、わしがよく世話になっちょる旅籠ぜよ。 安心して体を休めたらええ」


そよそよと心地よい風が舞い込む。

三日間眠り続けていたらしいと改めて思うと、どうしたものかと悩む。

今頃、彼らはどうしているのかと。


「気になるがか?」

「えっと……」

「壬生狼…今は新選組か。 奴らは、おまんを捜しちょったぜよ」


忙しなく飛び回る坂本も新選組に追われる身だ。

浅葱色のダンダラ羽織りは、この京ではよく目立つので逃げるのは容易いと坂本は笑う。


「店に入っては、おまんのことを聞き漁っちょるみたいじゃ。もしわしらとおると知ったら、腰を抜かしよるぜよ」

「……笑い事じゃないと思うんですけど」

「じゃがしかし、おまんは帰るべきやない。 あっこは、おまんには狭すぎるぜよ」


キラキラと双眸を輝かせる坂本は、やはり少年のようだと失礼なことを思いながら、複雑な心境になっていた。


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