駆け抜けた少女【完】


しかし、あの時……。


皆が寝静まってからも沖田一人は眠れずにいた。


のそりと布団から這い出て縁側に座った。



矢央が藤堂の傷を癒やした瞬間に感じた気配、それが凄く懐かしく感じた。


不思議な力と、不思議な雰囲気を漂わせていた。


矢央の背後に………



お華がいた。


確かに一瞬だったが沖田には見えていた。


藤堂を優しく包むお華の姿を、自分のこの眼で。


「あなたは本当に何処からやってきたんだ…」



その沖田の悲しき問いは、誰にも届かない。


その答えを知るのは、彼の姿を見つめる一人の少女……


ただ、一人だけだった。



その摩訶不思議な出来事は、京の町に夏が訪れる矢先の出来事であった―――――




< 77 / 592 >

この作品をシェア

pagetop