だから、君に

朝、いつものように海へ寄った。
潮風がさわさわと髪を撫でて気持ちいい。

暗い海の夢を見たせいか、いつもより水面がきらきら輝いて見える。

浜辺にしゃがみ込んで、境界線にぼんやり目をやる。

海が好きで、海が嫌いだ。
僕と由紀が最後に時間を過ごした場所。
僕と由紀を完全に引き離した場所。

何も、由紀由紀由紀、って、十代の淡い想いと感傷にひたっていたいわけではなかった。

ただ海にいると、由紀と今でもつながっているように錯覚ができた。

そしてそれはひどく居心地のよいことなのだ。

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