だから、君に

「何してんの」

波音の突然変異かと思った。

背後から聞こえた、女の声。

「何してんの」

由紀に似た、相手を突き放すような抑揚のない声。

恐る恐る首を曲げ後ろを見ると、少し離れたところに麻生が立っていた。

学生鞄を肩から下げ、僕の顔をじっと見つめ返す。

「死にたいの?」

風が強く吹き上がって、麻生の黒い髪が大きく波打った。


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