だから、君に
【4】ぬるいかぜ
【4】ぬるいかぜ

グラウンドの野球部の熱気が熱狂に変わり、終わった試験もなんのそのクラス中が一部浮かれまくり一部張り詰め、荒川が本格的に授業を放棄し始め、根岸が足繁く各教科の準備室に通う。

つまり、夏が来たということ。

「夏休み前に、二者面談やるからなー。希望の時間を明日提出するように」

帰りのホームルーム、僕はクラス中に聞こえるように声を上げながら、二者面談の要項を黒板に貼付けた。
あちこちで不満げな声や緊張した囁きが湧く。

「卒業後の進路についての面談だからな。各自きちんと考えてくるように」

「せんせー、夏休みは前田先生とデートするんですかー?」

生徒の冷やかしに、きゃはははとからかうような歓声が上がる。

あーはいはい、と面倒くさそうに手を払ってみせると、つまんなぁいと言いながら、発言の主が後ろの席の麻生を振り向いた。


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