だから、君に
僕はそれを聞くのが怖い。彼女は最後に、僕たちを恨んだのではないか。だからこそ、麻生の祖父母が僕たちを憎んでいるのではないか。

「由紀が高校に入学したとき、」

麻生に語りかけるでもなく、僕はひとりでに話し始めた。

「僕は中二で。それまでのお年玉とか、小遣いを貯めて、由紀に入学祝いを贈ったんだ」

中学生男子が顔を真っ赤にしながら、女の子のたくさんいる雑貨屋に行ってね、と話す僕を、麻生はからかうことなく、静かに見つめている。

「由紀が普段から着けても、変に見えないシンプルなものを選んだつもりなんだけど。どう思う?」

麻生は少し首を傾けて、曖昧に笑った。

「どうでしょう。でも、気に入ってたんじゃないでしょうか」

「そうかな」

「はい。由紀姉なら、もっとカワイイ系も似合ったかもしれないけど」

「……そんなの、レジに持って行けるかよ」

僕は笑い返しながら、ゆっくり窓に視線を移した。


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