妖魔03(R)〜星霜〜
私が一人であった場合、紛れもなく死地に辿り着いていたでしょう。

「久遠、帰るわよ」

「冬狐お、美咲は、本当に死んじゃったの?」

「死んだわよ」

「うええ、えええん」

「久遠、美咲は泣きたくても泣けない状況で辛くても笑っていたのに、親のあんたは泣き続けてもいいって言うの?」

「うう、だって、美咲が、いなくなって、解らないんだもん」

「何が解らない?」

「ずっと、一緒にいたのに、いないっていう事が、解らないんだ、考えられないんだ」

「受け入れるしかないわ。これからは、目の前で起こってる事に考えていかなければならないの」

「冬狐お、オイラ、やだよおお」

笹原冬狐さんの胸に顔を埋めて、更に声を大にして鳴きます。

「御仁、そろそろ動けるかえ?」

「感動の親子劇に魅入っていましたね」

自分の調子を確かめると、骨や内臓の違和感は消えていますね。

私は立ち上がり、スーツを確認してみます。

「おやおや、一張羅が焦げていますね」

肉体は回復するようですが、服装までは元には戻らないようです。

「すまぬ、ワラワの力不足のようじゃ」

「いえいえ、あなたにはお世話になっていますからね。お返しにこの魔草青汁を少し分けますよ」

先ほど手渡された魔草青汁を龍さんに渡します。

「そなたは心が大きいのう」

「おやおや、今日という日を記憶に叩き込みたくなりますね」

脳に描けるのなら、今すぐにでも取り出してペンで描きたいですよ。

龍さんは喉が渇いているのでしょうか。

喉を鳴らしながら、良い飲みっぷりを見せています。

「プハ!とてつもなく甘いのじゃ!」

誰がどう聞いても、前向きに改良出来るような意見を言うとは、さすがは龍さんですね。
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