キラキラ
「あの声だったら、このカバー歌えんだろ」
そう言って雪音に楽譜を放って渡す。
うまく受け取った彼女は、黙って楽譜を見つめる。
敬太にも楽譜を渡す。
こいつは、一度見るとすぐに叩けてしまう。
体がリズムでできている、そんな感じだ。
雪音に視線を戻すと、彼女は制服のリボンをほどき、第一ボタンを外してマイクの前に立つ。
喉元に、小さな星のネックレスが揺れる。
にかっと笑った敬太がカウントを刻む。
ちらっとこっちを見た雪音に、聞かせてみろ、という思いで笑ってやる。
歌い出した雪音の声は、まさにその返事に値するものだった。
凛とした声。伸びやかなソプラノ。可愛い、というよりは力強い。飛びかかってきそうな声だ。
それはあまりにも彼女らしく、正直だと思った。
おもしろい。
こんな奴、他にいない。
だいたい、俺の家がどんな家か聞いた女は、みんな猫のようにすりよってきたものだが、こいつは一切なびかない。
動じない、というところか。
昔から、解けない問題の方がやる気になった。大抵のものは努力しなくても手に入ったからだ。
こいつは、おもしろい。
芽生える感情を楽しみながら、彼女の声にギターをかき鳴らした。