貴方ニ復讐シマス
 だが、もう夜だ。今電話しても水道会社は出ないだろうし、夜に電話するのもと、いつもなら神経質に気にするのに何故だか今夜だけは気にはしなかった。
 もう一度階段へと向おうと振り向くと、そこには赤ら顔をした男が包丁を振り上げていた。
 男は生まれて初めて本当に恐怖と危険をその身で感じとった。
 一体どこから入ってきたのだろう?どうして自分が狙われている?そんな疑問が浮かぶが、頭は混乱して逃げろという指示をださない。足はガクガクといつの間にか震えていた。
 包丁を持った男がそれに気付き、唇を卑しく曲げる。

「書イタダロウ?痛ミハ必ズ貴方ニ戻ッテクル。俺ハ、オ前ノセイデ死ンダ。ダカラ、オ前モ死ヌベキダ」
「う、うわあああぁあぁああぁあ!」

 やっと脳が足に逃げろと指示を送った。しかし、彼が一歩踏み出すよりも早く包丁が男のノドぼとけに食い込み引き裂いた。
 たちまち、彼から出た血で部屋中は血の海になる。
 倒れ込み、意識が朦朧としている彼に、男は包丁を持ち替えてニヤリと笑った。

「思ッタヨリモ脆インダナ」

 彼の意識と命は、この瞬間途切れた……。
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