女王様御用達。
「お前も一人旅は寂しいだろ?男を同伴させてやるよ」
ということで。
アタシと同伴男はオーノンに向かう船に乗っていた。
「うえー」
後ろ頭は白と黒のマダラになっているそいつは、背中を丸めて海にずっと吐き続けていた。
「……」
船が通った跡の海面にモザイクかけなきゃいけないものが点々と浮いている。
もやし体型にどうすればこんなに吐けるのか不思議だ。
「おい、ハチ」
アタシの声は聞こえないらしく、げろげろと海に流してる。
声を張り上げる。
「ハチ・アキタイヌ!!」
「犬じゃねえ!!」
彼は立ち上がり大声を上げて自分の名を否定した。
「だあああ。あの女王様は、なんで人に犬の名前付けたがるんだ!!しかも今回は確実にイヌって入っているし」
「ちなみに最終学歴はイヌの訓練学校だって」
「知ってるよ!!2度目だよ!!使い回しだよ!!」
一通り叫び、はあ、とまた座り込むハチ。
「お前が自分の名前の変更届を出さないから悪いのよ。エロ作家」
この男は、女王の課題を果たし、その報酬に自分の名前を変更出来る権利を得た。
しかし、彼はいつまでたってもその変更をせず、オーノンへは偽造のパスで行かなければならない。
そしてその仮パスが、『ハチ・アキタイヌ』。
ちなみに命名者の女王は、人をいぢめる事が大好きな奴だ。
「決めきらない、てめえが悪い」
「あんたね、自分の名前だぞ。そう簡単に決めたくないだろ!!」
「ポチ・プードルと書いて、ハイ終わり」
「前回、それを名乗ってどれだけ笑われたことか!!」
「本名名乗って逮捕されるよりはマシでしょ」
彼は大声を上げて、アタシに食いかかろうとしたがぱたりと止まった。
きょとんとした顔はまだ幼く、19くらいか。
たよりなくて、何か物足りない顔立ちだ。
「アンタ、誰?」
こいつは…。