花束

真っ暗なあさ

朝がきた。ゆいののいない真っ暗な朝が。
「………ゆいの、」
いないのは分かっている。それでも名前を呼んでみる。
『葉月』
もう、そんな優しい声がかえってこないなんて。
信じられない。信じたくない。

ゆいのがいなくなってからもう三日が経つ。否、三日も、経ったというべきか。

「ゆい、」
「葉月ちゃん、ご飯できたわよー?」
「………今、行くから」
もう一度名前を呼ぼうとしたけれど、それは未遂に終わる。
叔母の声がしたからだ。
ご飯なんて食べたくないしいらないけれど、食べないわけにはいかないだろう。
落ち込んでいるあたしをみて悲しんでいる叔母をこれ以上悲しませるわけにはいかない。
とんとんと階段を降り、叔母と朝ご飯が待つリビングへと向かう。叔父はあたしが起きる前に仕事へ向かっているのでなかなか会うことはない。
まあすきでもないし嫌いでもない、いわゆる「普通」の人だから、どうでもいいのだけれど。

‐ゆいの、

心の中でその名を呼ぶ。返事はやっぱり‐かえってこないけれど。
< 14 / 20 >

この作品をシェア

pagetop