シアワセの時間



――…6月24日。

待ち合わせた場所は美弥の通う高校。
それは、最後に拓也と会った時に住んでいた場所から今年の5月に学校の近くへと引っ越したからであった。

そうで無ければ、恐らく拓也が美弥の家の近くまで美弥を迎えに行って居ただろう。

その方が拓也にも美弥にも都合が良かったから。


「あ、もうたっくん来てる。」

美弥が歩いて学校の敷地内に入った時駐車場には既に、拓也の愛車で在る赤いセダンが停まっていた。
それを見た美弥は少し歩くスピードを速め、彼の車へと向かう。

コンコンと軽く助手席の窓を叩いてから、ドアを開けて、開口一番に言った。

「たっくん久しぶり!
ゴメン、私から呼び出したのに…待った?」

それを言うと、美弥は拓也の車へと乗り込む。
拓也がこの車に買い替えてから拓也の助手席に乗るのは初めてであったが、車を買い替える前は、皆で遊んでいる時に何かと送ってもらったり乗せてもらって居たので、手慣れたものだった。

「久しぶりだね。
いや車だし、時間に美弥ちゃんが遅刻してる訳でも無いから来にしなくていいよ。
でも、思ったより元気そうで安心したよ。」

そう、美弥が拓也を呼び出したのには理由があった。
引っ越ししたことに寄る慣れない環境での生活に加え、学校で美弥に敵対心を向ける同級生の嫌がらせがエスカレートしており、ストレスで睡眠時間や食事量が低下していたのだ。
そこで、愚痴を聞いてもらったり、相談に乗って貰おうと拓也を呼んだのが、この日会う本来の目的だった。
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