秋霖のビ
止まない雨
立ち上がらなくては。冷たく悲しい水玉は、私の上に落ち続けている。

立ち上がらなくてはいけない。

正気を失った砂と、満ちすぎた青黒い海。水玉に混じり合いながら、痛々しい音で泣いている。

誰もいないのに先月よりもうるさい、雨の音だけが響き渡る浜辺。

怒りにも似た荒々しい波がくっきりと、山の形を作って右から左へ、またはあちらからこちらへ、勢いよく打ち込まれてくる。

退くことを知らないその波たちは、私の居場所さえも、さらっていきそうだ。

まだ、まだ私はここにいたいのに。

気付けば、右側に置いたビニール袋に雨はバチバチと、踊るように降り注いでいた。

だから、うるさいんだ。
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