みどりちゃんの初恋

 ちぃの婚約者でもあり、雄太郎の異母兄弟でもあるタツキさんは、もうちぃにベタ惚れ。

 ちぃは手を止めて、タツキさんを一瞥。

「……ねえ、タク。隣の犬、叩き起こしてくれない?」

 ガツ。

「っ!!いってえなぁああっ!!」

 がばっと起き上がったハヤシっちは、一生懸命頭をさする。

 はあーっとため息をついてから「おにぃちゃあん〜。タクが苛めるぅ〜」と口を尖らせた。

「雄太郎。気持ち悪いわ」

 限りなく冷たい声音でぴしゃりと言ったちぃは、再び紙面に視線を落とす。

 頬杖をしながら、もうそりゃあ色っぽい曲線をフルに晒しながら、脳ミソフル回転。

「……ちぃー」

 この体勢のままちぃに話し掛けると、一瞬目を丸くしてからふわりと微笑んだ。

「みどり起きてたの?」

「ハヤシっちと一緒にしないでっ」

「そうね。………あっ。みどりそこの棚から一昨年の球技大会の資料取ってくれない?」

 はーい、と返事をしたあたしは、びっしり資料がつまった本棚を見上げた。

< 2 / 99 >

この作品をシェア

pagetop